現代住宅は耐震性確保の観点からコンクリート製の頑丈な基礎が採用され、構造的な強度が確保されたものの、一方では伝統的日本家屋のような床下の自然通風は犠牲にされてきました。昨今では床下換気・通風の重要性が再認識されつつあり、基礎通気パッキンなどの優れた換気部材も開発されています。
しかし、このような最新部材を採用した工法においても、中基礎(構造上の強度確保に有効な床下内部の基礎間仕切)をしっかり入れた床下や、一定以上の面積を持つ広めの床下などでは、どうしても自然通風が床下の中央部まで届きにくいという実態があります。

床下通風の実態イメージ画像01

一般的な基礎換気口による自然通風状態を示すCFD解析シミュレーション結果(南側から1.37m/sの自然風流入時)。コーナー部など、流路から外れたエリアでは通風が乏しい。

床下通風の実態イメージ画像02

基礎通気パッキン工法による自然通風状態を示すCFD解析シミュレーション結果(南側から1.37m/sの自然風流入時)。基礎外周部から離れた中央部付近の通風が乏しい。

立地や広さ、そして間取り等により、床下の構造は様々であり、床下の通風状態と環境は、1棟として同じものはありません。上図の床下は、むしろ比較的通風が良い構造であるとも言え、実際にはガレージ一体型住宅や半地下構造など、明らかに通風が不足するような構造も少なくありません。たとえば床面積が広い住宅では、基礎通気パッキンが配置されていても、床下の奥行きがあるために、自然通風のみでは床下中央部(奥深く)の通気がどうしても困難となります。これはアパート等の集合住宅も同様で、構造上、角部屋以外の床下通風は極度に不足する傾向があります。

床下通風の実態イメージ画像03

基礎断熱工法の床下では

昨今、気密・断熱性を高めたいわゆる外断熱工法の住宅が増えており、それに伴い床下と室内の温熱環境同一化を目的として、基礎断熱(床面でなく基礎外周面を断熱する)工法を採用する住宅が増加しています。基礎断熱の床下は一般の床下と違い、外気を取り入れる換気口がないため、自然通風は、ほぼ期待できません。そのかわり床にガラリなどを設け、室内との空気流通を図ったり、ダクト吸い込みにより換気を図ったりするのが一般的です。しかし基礎コンクリートの初期養生水分の蒸散や、生活水蒸気の流入により、床下内部には水蒸気が滞留しやすく、内部通風が乏しいこともあり、深刻な湿害の発生も報告されています。

床下通風の実態イメージ画像03

■築1年、基礎断熱工法の床下
24時間換気装置のダクトにより床下の換気が図られていたものの、換気の影響する範囲が限られており、内部は非常に高湿化(夏場の相対湿度は安定的に80%以上)し、床面の各所にカビが発生した。
基礎断熱の場合、床下の空気は、床ガラリ等により室内との流通が図られているため、カビなどによる汚染空気の室内への影響が懸念される。反面、基礎断熱の床下空気は、機械換気等によるコントロールがしやすく、対処さえ間違えなければ湿害の発生は抑えることが可能である。

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